Q.賃貸借の契約内容で注意する点はありますか?

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Q. 賃貸借の契約内容で注意する点はありますか?

A. 用途や状況にあわせた賃貸借契約の契約種類(普通借家契約・定期借家契約)の選定はもちろん、 契約書を作成する際は契約期間や家賃等のほかに、下記内容が条文もしくは特約などに明記されている かを確認しましょう。

・設備の負担基準:電球交換や鍵紛失時の交換費用などの借主負担基準について
・敷金(保証金)の取扱について:償却の有無や、退去時の原状回復工事清算事項など
・制限事項:使用用途、転貸借、民泊、ペット飼育、楽器、騒音、工事、等の制限事項の有無
・解約、解除事項:契約期間内もしくは契約期間満了時においての解約予告期日や、契約解除となる禁止事項 ※特に定期借家契約の場合は、契約の満了日をもって契約が終了する点と、途中解約の可否(賠償金事 項等を含む)を記載・説明しなくてはいけません。
・明渡し:残置物の撤去や、原状回復工事の費用負担内訳詳細など

その他、借主や連帯保証人の本人確認や、保証会社の加入、住宅保険への加入など、トラブルを未然に 防ぐためにも様々な確認事項があるため、安易に自主作成するのではなく不動産会社に依頼することが 理想的です。

また、賃貸借の契約を締結するうえで貸主が一番頭を悩ませるのは、建物の立替えや売却などの時、また借主とのトラブルが発生した時などに、如何にしてより穏便に借主の退去を促すかということです。 いざという時の為に、契約の種類によって借地借家法の概要や下記のポイントを覚えておくことが重要 です。

◆通常の賃貸借家契約で貸主側から解約する(普通賃貸借契約)
[ 1. 借主の合意が得られる場合 ]
一般的には退去日まで 2 ヶ月~3 ヶ月程の猶予を設けて、その間に引越し先をみつけてもらうケースが 多いです。解約事由が借主の滞納や使用状況等によるトラブルではなく、あくまでも一方的な貸主都合 である場合は、引越し費用の負担(相場は住居の場合は現賃料の3ヶ月分~6ヶ月分、店舗の場合は半 年分~1年分)や原状回復義務の免除等をするのが一般的です。
[ 2. 借主の合意が得られない場合 ]
正当な事由(※1)がある場合、下記の手順で貸主側から更新拒否や解約をすることが可能です。 契約期間の定めがある場合:契約満了日の 1 年前から 6 ヶ月前までの間に「更新拒絶通知」を借主に出すことにより、契約期間満了日に賃貸借契約は終了(※2)する。 契約期間の定めがない場合:「解約申入れ」を借主に出し、6ヶ月が経過したときに契約は終了(※2) する。
※1 正当な事由とは、最終的に民事裁判に至ってしまった場合に、様々な要因を考慮して総合的に判断されます。例えば、オーナーが建物を自己使用する場合や建物の老朽化による立替の必要性、また、借主の建物使用状況、他居住者とのトラブルなど、借主がその建物をこれ以上使用するべきではない相当な事由が求められます。
※2 どちらの場合も、契約期間満了後に借主が建物の使用を継続しているときは、貸主は遅滞なく 異議を述べる必要があります。

◆定期借家契約で貸主から途中契約する場合 原則として貸主からの解約はできませんが、借主の合意が得られれば合意解約は可能です。 (その場合は迷惑料や引越し費用等の名目の金銭的補助をするのが一般的です。)
また、定期借家契約の場合、借主(入居者)からは下記条件で途中解約が可能なので、契約の際は注意しましょう。

<借主から中途解約できる条件>
基本的に貸主との合意があれば解約は可能ですが、貸主の合意を得られない場合も下記3つの全ての条件を満たす事によって認められるケースがあります。
1 居住用として使用(一部でも可)している場合
2 床面積 200 m²以下(一部が住居以外の用途でも、全体の床面積の合計)
3 転勤・療養・親族の介護その他やむを得ない事情で使用を続けることができない 上記に当てはまらない場合でも、契約書の特約に途中解約が可能な文言を記載することにより、借主側 からの途中解約は可能です。 店舗等の高額賃料の定期借家契約で急な途中解約のリスクを懸念する場合は、「借主が残存期間分の賃 料を賠償金として支払えば直ちに中途解約が可能」等の特約を定めることにより、貸主借主双方のメリットがありながら急に家賃収入が無くなるという事態を防ぐことも可能です。

いずれの場合においても、貸主都合での解約は、裁判になってしまうと本来の明渡し希望時期よりも大幅に期間を要します。トラブルを未然に防ぐためにも、賃借人の立場に立ち良識のある立退条件を提示することが重要です。金銭的な補助だけでなく、お詫びの言葉を添えて細かく事情を説明し、円満な合意を目指す事が理想的 といえます。