Q・売買の契約条項で気を付けることはありますか?

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Q・売買の契約条項で気を付けることはありますか?

A・物件の特性や権利関係によってさまざまですが、違約金や解約事項、また停止条件などは特に注意が 必要です。

◆ローン特約の文言が入っているか
融資を受けて購入する場合、万が一金融機関から本承認がおりなければ白紙解約できる「ローン特約」 という特約があります。ローン特約期日は一般的に契約してから 3 週間~1 ヶ月程度です。万が一本承 認が下りなければ、ローン審査が通らなかった旨を証明することで契約を解除することが可能です。

 ◆手付金の種類は妥当であるか
手付金の相場は売買代金の5%~10%で、種別は主に 3 種類あります。(「解約手付」・「違約手付」・「証 約手付」) 一般的には「解約手付」という手付金が用いられます。これは契約の相手方が「契約の履行に着手する まで」や「手付解除期日まで」に互いに書面により通知をおこなえば、買主は手付金を放棄する事で、また売主は受領した手付金の返還+手付金の同額を支払う事で、契約が解除できるものです。それとは違い、「証約手付」は契約の締結を証する事を目的として授受される手付金であり、上記のような解約はできません。また「違約手付」は契約違反があった場合に損害賠償とは別に違約金として没収する(または倍額を支払う)という趣旨の手付金です。 文言に手付金種別の明記が無い事も多いため、条文の内容を理解したうえで手付金の種別や金額を認識することが大切です。

◆契約不適合責任の内容が妥当であるか
契約不適合責任とは、「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものがあるとき」に売主が責任を負い買主が保護されるという制度です。簡単にいえば『雨漏りや白アリ被害から設備の故障 などまで、土地・建物に何か不具合があった場合は買主は売主に対し補修請求や代金減額請求、損害賠償請求などが可能』という主旨の制度ですが、売主が宅建業者の場合とそれ以外の法人または個人が売主の場合とで責任を制限できる内容が少し違います。
・売主が宅建業者の場合:引渡しから 2 年間は必ず責任を負わなければいけません。
・売主が法人の場合:消費者保護法により 1 年間は必ず責任を負わなければいけません。
 ・売主がその他個人の場合:売主が責任を負う期間は双方の合意で自由に定めることができます。ま た、買主があらかじめ知っていた瑕疵に関しては責任を負わない旨の特約や、契約不適合責任を免責と する特約も双方の合意のもと有効です。
 売主の立場だった場合に重要なのは、あらかじめ買主に伝えている瑕疵や不備は契約書に明記することです。また、設備の経年劣化によるものや契約前に事前に買主に伝えている瑕疵や不備に対しては、契 約不適合責任が免責になる旨の文言も明記することで、引渡後のトラブルを防げます。なお、期間の指定をしないと 10 年(民法の債権消滅時効により消滅する期間)もの間、物件に何か不 具合が発生した場合に売主は責任を負わなくてはいけません。なので、責任を負う期間を3 ヶ月~1 年 に指定して契約書に明記するのが一般的です。

◆停止条件や解除条件の有無
例えば借地権売買の場合、底地権者の譲渡承諾が取得できずに売主が決済期日までに物件の引き渡しが 不可能となった場合は「債務不履行」と呼ばれる違約行為にあたり、違約金を支払わなくてはいけませ ん。こういった事態を防ぐために、『本契約は底地権者からの書面による譲渡承諾を得る事を停止条件 とする』などという文言を特約などに明記し、ある条件を充たした場合にのみ当該契約の効力が発生す る「停止条件」をつけることが一般的です。また、ある条件を充たさなかった場合には当該契約の効力 を失う「解除条件」もあり、代表的な例として融資の本承認を条件として購入する「ローン特約」など があります。「停止条件」「解除条件」どちらも、契約が無効もしくは失効となった場合は手付金の返還 等を請求できます。(「停止条件」は契約自体は有効ですが、契約時点では定められたお互いの義務を履 行させる効力はなく条件を充たしてから効力が発生します。一方、「解除条件」は契約時からお互いの履行義務の効力は発生していますが条件を充たさなかった場合は解除されるという少し異なる性質を持 ちます。) また、買主が『必須条件ではないが、なるべく確定測量を実施して欲しい』などの、必須購入条件では なく「要望や希望」がある場合などのケースでは、違約や解約には影響しない売主の「努力義務」とし て契約書に盛り込むことも可能です。 その他にも、境界確定条件や、越境解消条件、賃貸借人の退去条件、私道所有者の通行掘削承諾取得条 件、任意売却での債権者の同意条件、建築条件付土地の一定期間内の建築請負契約成立条件、など様々 な停止条件や解除条件があります。 売主・買主どちらの立場においても、安全な取引の為に停止条件や解除条件が役立ちます。双方の合意 があれば不動産に関する事に関わらず様々な停止条件をつける事が可能(例えば、転勤の有無や入社の 可否等)なので、取引にあたり懸念事項がある場合はその旨を事前に必ず相談しましょう。逆に、相手 方から何も相談がなく不利益または期間損失になり得る停止条件が付いていた場合は、話し合いのうえ 条件の変更交渉等が必要です。

上記はほんの一例で、特約部分に追記されている文言や違約金の額など、契約書の条文一つ一つに注意 する必要があります。不動産売買は専門的な知識が大半を占め、物件の特性や状況や権利関係等によっ てリスクは様々です。契約書を作成する担当者の知識や上席のチェックミス等により内容の不足や文言 の言い間違い等があったりする事も多い為、ひとえに不動産会社が作成したものだからといって完璧な ものと誤認してはいけません。仲介会社が作成した契約書を鵜呑みにするのではなく、リスク回避のために不足事項の追記要望などをしたうえで、全ての内容を理解してから契約に進むことが大切です。